あらきひろみちさんとアトリエ

【あらきひろみちさんとアトリエ】
 
 
田原市中山町、植物に覆われて悠然と建つドーム型の建物があります。「あらき先生」と地域の人から呼ばれ、親しまれた高校の美術教師であり美術家の故・あらきひろみちさん(1935-2006)がセル フビルドで建てたコルゲート建築によるアトリエです。

あらき先生は教職中から定年後、亡くなる直前まで多くの作品を発表する傍ら、渥美半島をこよなく愛し、地域の文化振興や自然保護などジャンルを超えた創作活動を続けました。

残されている風景画や渥美半島の作家、故・杉浦明平さん (1913-2001)の執筆作品の描いた挿絵は渥美の風土がそのまま表われているような素朴で味わい深さに溢れ、地域の人はその作品を通して地元の風景への愛着を感じる。まさに文化と地域の人との橋渡しをしていたような活動でした。

「自力更生・独立自主」。

アトリエの内部に大きく掲げられた自筆の言葉です。

何でも自分で考え勉強し、自身の手で作ってきたあらき先生。

建築に対する探求もその一部で、1974 年にはバックミンスター・フラーの構想によるフラードームのアトリエを建て、現在のコルゲートパイプのアトリエは1995年に建てられました。

 
コルゲート建築
ー楕円と六角形の鉄の家ー

 
 
コルゲートパイプの建築・鉄の家を考 案したのは豊橋市在住だった科学者で設備設計家、世界的エンジニアの故・川合 健二さん (1913-1996)。

川合さんとあらきさんは30年以上に渡る交流があり、共に科学や、自然と共存する未来のエネルギーシステムなどについて学び合っていた仲間だったとのこと

世界で最初に建てられたコルゲートパイプの家は川合健二さんの自宅であり、異次元の世界からやってきたかのような圧倒的な姿のまま、豊橋市内に静かに建っています。

「コルゲー トパイプ」とは波型の鉄板をボルトで止めて楕円型にしたもので、通常は下水管やトンネル工事などに用いられる。災害に強く環境に優しく、且つコストがかからない建物や暮らしを、川合さんもあらきさんも全て独学で研究してきました。

先人たちの生きた時間が詰まったこのアトリエが今でも私たちを学ばせ、未来へのヒントを語り続けているかのようです。
 
 


アトリエ内部の様子

 
 

アトリエに残るあらきさん自筆のメモ書き