秋田 – 人情がつなぐ郷土・人・伝統文化-


【秋田 西馬音内の盆踊り】
– 人情がつなぐ郷土・人・伝統文化-
 

「一年の5ヶ月が雪に埋もれる雪国秋田。ぶ厚く白い雲に覆われた田畑、野山の動物は眠る。」
柳田国男「雪国の民族」より
 
 
西馬音内の盆踊り
 

友人を訪ねて秋田へ旅をしたのはお盆の頃。

「日本一美しい」 と聞き、以前から観てみたかった秋田県羽後町西馬音内で行われる盆踊りに訪れました。

会場に着いた時はちょうど、櫓の上で寄せ太鼓と囃子が奏でられ、踊りの舞台となる通りには篝火が灯されたところでした。

やがて歌が加わり、踊りが始まると一気に幻想的で妖艶な光景に魅了されてしまいました。

約700年前に始まったとされ、「亡者踊り」とも呼ばれるこの踊りは、その象徴とも言えるのが半月型の編笠と、彦三頭巾で顔を隠して踊る姿。

美しい指先の動き、身に纏う「端縫い」と藍染の着物が艶やかさとなり、見る者の心を捉えます。

一時は弾圧などの理由で衰えた頃もあったようですが、地元の人たちの熱意でこれまで盛んに行われてきました。

この「西馬音内の盆踊り」の他にも「竿灯祭り」、「なまはげ」や「かまくら」 などの四季折々の祭りと年中行事、伝統芸能が秋田県には多く残り、その豊富さと特殊性は重要無形文化財として16件も登録される(全国1位)など、他の県と比べても飛び抜けています。
 
これほどまでに多様で多くの伝統が残されている理由には、どんな背景があるのでしょうか。それは、「共同体の結束」 として、集落での助け合いの意識を守るためではないかと言われています。

雪掻きの経験もなく、雪は年に一度降るか降らぬかの温暖な渥美半島に暮らす私には、雪国の暮らしの厳しさは到底語ることも出来ませんが、集落の無事と、その年の豊作を願いながら、行事や祭りを通してその団結は培われてきたことと想像します。
 
秋田の旅を通して温かく迎えてくれた友人や出会った人達から受けたのは郷土を愛し、仲間を想う誇りと人情でした。

民俗文化は、そこでの暮らしの中で「人」を介して継承されていきます。

受け継ぐ「人」があっての財産。 それらを育み、支えているのはまさしく草の根の郷土愛と人情、そんな風に感じました。

 
 

郡言堂

郡言堂

根のある暮らし

島根県、出雲大社から車で約1時間、世界遺産に登録されている石見銀山のある太田市 大森町で、衣・食・住のあり方を追求し、ライフスタイルを発信し続けるブランドショップ「群言堂」に訪れました。

運営するのは「株式会 社 石見銀山生活文化研究所」。

創業者の松場大吉さん、登美さん夫妻の「日本の昔ながらの美しい生活文化を残していきたい。」という想いと共に、1998年の設立以来、常に進化しながら「根のある暮らし」を伝え、ブランドショップは日本全国に約34店舗を持つまでに発展しています。

古民家再生への取り組みや「暮らす宿」、本社として使用する茅葺き屋根の建物「鄙家(ひなや)」が伝える「棲まう」文化など、発信しているのは多角的であるようで「暮らし」という一つの営み。

石見銀山を背景とした歴史ある町大森町に溶け込みながら、文化とビジネスが両輪となり静かに、力強く訪れる人を迎えているようでした。

群言堂のweb siteの扉にはこんな言葉が書かれています。

ーこの地に関わる全ての人の幸せと誇りのために私たちは復古創新というモノサシで美しい循環を継続していきます。ー


かつて鉱山町として栄えた大森町の町並み

 

群言堂本店2Fスペース
 

龍源寺間歩(まぶ)の入り口
 

群言堂本店はかつて鉱山町として栄えた「大森町の町並み」の通り沿いに建っています。

松場夫妻が築150年の旧商家を買い取り、役18年の歳月をかけて手を加えて作り上げた空間は、経てきた歳月と人の手によって作られたものの美しさに満ちていました。

敷地は300坪、1Fにはオリジナルブランドの洋服や暮らしの道具を扱うショップ、カフェ、ギャラリーが広がっている。重厚な木造階段に誘われて2Fに上がるとそこは、セレクトされた本が置かれた読書ルームです。

展示やイベントが行われる場でもあり、静かで凛とした空気に心身を浸し、しばし贅沢な時間を過ごしました。

14世紀〜大正時代の約500年以上に渡り、鉱山として機能した石見銀山は、最も繁栄していた江戸時代には20万人もの人がこの地に暮らしていたとのこと。

大森町の重要伝統的建造物保存地区に指定されている町並みは武家や商家、代官所跡などの歴史ある建物が今も多く残り、賑わっていた往時の様子を想像しながら散策しました。

鉱山遺跡としては、600を超える間歩(坑道が点在しているが、その中でも「龍源寺間歩(まぶ)」は常時公開されている唯一の間歩であり、先人たちの技術や暮らし、歴史を感じることが出来ます。

現在、大森町の人口は約400人。群言堂の松場夫妻は山間の町で、「仕事がないのなら自分で起業する。」という考えで、暮らしと働き方を切り拓いてきました。

旅を終え、この遠く離れた大森町の里で感じたメッセージを自分の場所に置き換えながら、今いる場所で出来る、私達の「根のある暮らし」を考え続けています。

 
群言堂 石見銀山本店
島根県大田市大森町ハ183
TEL 0845-89-0077
http://www.gungendo.co.jp/
 
協力/群言堂