「エア建~あたらしい視点の建立」を終えて



 
~目が世界を建築する~

エア建・・・想像と思考で(エアで)建てる、新しい世界。

1月29日(日)、ガラス造形、インスタレーション、アートワークショップの企画などで活躍する田口友里衣さんのワークショップが明星ライブラリーにて開催されました。

明星ライブラリーが位置する周辺、中山、小中山地区を散歩しながら巡り、写真を撮り、「新たな視点」を持って建築物やものの造形、暮らしを見つめることで浮かび上がってくるものをシェアし合いました。

この日、田口さんから提示されたテーマは

「ひっくりかえす」

友里衣さんが高校時代に影響を受けた、現代アート、マルセル・デュシャンの作品「泉」や赤瀬川原平の作品「宇宙の缶詰」、ルチオ・フォンタナの作品「空間概念」などのお話を座学として伺い、彼らがみせた「価値観の転換」=「ひっくりかえす」を視点として散歩に出かけます。


 
渥美半島の先端にある明星ライブラリー。海沿いの小さな地区、中山、小中山はおもに昔ながらの農業、漁業を営む家の集落であり、大きな道路も喧騒もなく、静かで素朴な小道から小道を歩きました。

故・あらきひろみち先生のコルゲート建築のアトリエ、風土に根付き、地元ならではとなった壁の様式や軒先の形、トタン壁、各家に祀られる家神様のお社、自転車一台が通るのがやっとな程の幅の小さな道・・・

「雨が降ってきたねぇ。」と見知らぬ私たちにすれ違いざまに声をかけてくれるおばあちゃん。

既存の価値にとらわれず、心を自由にして気になるものや風景、造形を写真に写したり、おしゃべりしたり、ときにテーマから脱線しながら、散歩を楽しみました。
 


 


 
 

それぞれの見立て~彼岸と此岸の曼荼羅~

明星ライブラリーに戻り、それぞれが見た視点や風景、撮った写真、そこから想像したことについてのシェアリングの時間へ。

誰かが名付けた意味から解き放たれ、別のレンズで世界を眺めるとき、目の前の廃墟は輝き出し、何気ない小道が、思わず参加してみたくなるようなアートな展示の場へ。ここにある朽ちた残骸はどこかの世界の誰かが残した、大切なもの。

マクロレンズから覗くミクロな世界はどこと繋がり、またどこへ続いていくのか。

奇妙な植物の本当の正体は、誰も知らない。

 
フラードームを探して

私がこの日、個人的に心を占めていたのは子供のころに見ていたある景色。

皆さんと訪れた、故・あらきひろみち先生のアトリエ、コルゲート建築が建つ以前のアトリエは1974年に建築された、バックミンスター・フラーのデザインから構想された、フラードームでした。

近所にあるこのドームを眺める度に「不思議なものがある。」と幼心にワクワクした気持ちを覚えています。

 「自己エコロジー」 はフラーの言葉。見える世界、感じる世界は自分と環境の相互の関係。

自分が変われば世界が変わる。(またその逆も。)

現在はそこに見えなくても、かつては存在していたフラードームを心の中に想像し、自分次第で世界との関係はメビウスの輪のように裏と表が変換する、自由な視点を持つことの楽しさをかみしめていました。

 


 
この日、エアで建てた想像の世界、皆さんとそれぞれの視点、創造、知識を共有することで、自分と世界を見つめ、さらに新しい自分を生きるための対話と探求の場となりました。

ナビゲーターの田口友里衣さん、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。