写真展「わだつみの丘」ありがとうございました。


 
普門寺 もみじ祭りにて開催致しました朝野耕史 写真展「わだつみの丘」〜東日本大震災から10年を迎えて〜 は無事5日間の日程を終了致しました。

今年の普門寺の紅葉は、「近年でも特に美しい」という声を多く聞きました。

本堂が建つ山の上までの階段を、息を切らしながら登り、写真展会場にお越しくださったたくさんの皆さま、気にかけてくださった方々、ありがとうございました。

朝野が復興ボランティア活動で初めて東北を訪れたのは2011年の夏でした。以来10年間、幾度か訪れて撮影した東北の様子の一端を展示し、可能な限りお話をしながら見てきたことをお伝えさせていただきました。

朝野自身も、途中から何度か同行した私も、未だに震災のことは一言では語れるものでは到底ないと感じてます。

宮城県女川町、石巻市、牡鹿半島、浦戸諸島の野々島、仙台市、福島県浪江町、出会った人達、お世話になった人達、移り変わる風景、変わらぬもの、生きるということ。

「われらひとしく丘に立ち」という宮沢賢治の詩を今回の展示の案内文に添えさせていただきました。これは、宮沢賢治が修学旅行の旅先で生まれて初めて海を見たときの感慨を詠んだもの。

“われらひとしく丘にたち
青ぐろくしてぶちうてる
あやしきもののひろがりを
東はてなくのぞみけり
そは巨いなる鹽の水
海とはおのもさとれども
傳へてききしそのものと
あまりにたがふここちして
ただうつつなるうすれ日に
そのわだつみの潮騒の
うろこの國の波がしら
きほひ寄するをのぞみゐたりき”

宮沢賢治 「われらひとしく丘に立ち」

 
現在、この詩碑が宮城県石巻市の日和山(ひよりやま)の上に建っています。
日和山は震災の日、多くの人が津波から避難した場所です。

賢治の詩は、目の前に果てしなく広がる太平洋を眺めて賛美するというよりは、底知れぬ不気味さのようなものが海というものにはある、と感じているかのようです。

朝野が訪れた10年の間で、震災の被害を受けたTさんとKさんと出会い、交流を持つようになりました。

津波で大切な故郷と親友を失ったTさん。乗っていた車ごと津波に流され、偶然にも木に引っ掛かったことで奇跡的に救出されたKさんは、10年経ってようやく海が眺められるようになったと話します。

全てをさらっていった海。しかしその海の恩恵の中に日々の暮らしのがあり、2人の心には「海と共に生きる」という想いが今も変わらずあります。

「われらひとしく丘に立ち」

大自然という大地に、また、よろこびと悲しみに彩られた「生きる」という日常の丘に、私たちは皆ひとしく立っている。展示をお伝えする中でそんなことを思いながら、小さくても今ある目の前のことに精一杯に向き合うことをこれからも続けていきたいと感じさせていただきました。

 

会場の普門寺本堂前に立つ樹齢450年の観音杉。