第1回 野市 9.28
9月28日(土)は 暮らしを耕す小さなマーケット「野市」の第一回目の開催となりました。
この日は雨予報だったこともあり、当初予定していた屋外での開催を急遽店内での開催に。
出店者さん、ご来場いただいたお客様にはスペース的に少々不自由な思いをさせてしまった面もあるかと思いますが、マーケットと「noai(ノアイ)」と名付けた手作り品の持ち寄りによる交流会で、和やかに賑やかに愉しんでいただくことが出来ました。
【マーケットの様子から】
「studuo chorori」さん
半農半陶を目指すchororiさんが手掛けるニホンミツバチのはちみつ、蜜蝋蝋燭と現代陶作家として制作した植物をモチーフとしたマグカップなど。
「リカとハナコの畑おやつ」さん
様々な農園のお手伝いをしながら、自身で営む農的暮らしのあり方を探求し、実践を重ねる理香さんが作る自家製ジャム(金柑・桑の実・かぼちゃ餡)を練り込んだ米粉のマフィンと、どろんこ村のベーコンを使ったベーコンエピ、野菜たっぷりスパニッシュオムレツ。
理香さんが作る料理やスイーツは生きた素材の自然な味わいでとっても美味しいのです。
【noai(ノアイ)のテーブル】
「猪肉ハンバーグ」/ 豆に暮らす野の暮らし研究所さん作
スェーデン料理「ハッセルバックポテト」(右)と中近東の料理「フムス」(ひよこ豆のペースト)(左) / 豆に暮らす野の暮らし研究所さん作
バターナッツのスープ/ Office Presenceさん
保美豚ソーセージときのこのピザ/ myoujou
四国伝統茶
世界でも珍しい微生物発酵のお茶
-すだちあわまるさん-
この日、出店者のすだちあわまるさんが瑞々しいすだちと一緒に紹介してくれたのは徳島の「阿波晩茶」と四国の伝統茶のことでした。
「阿波晩茶」は「後発酵茶」と言われる微生物の力で発酵させたお茶で、国内では4地域でしか継承されていない大変貴重なお茶。徳島県の上勝の阿波晩茶、愛媛県の西条の「石鎚黒茶」、高知県の大豊の「碁石茶」、富山県の朝日の「バタバタ茶」です。
これらのお茶は約1000年以上前からあると伝えられ、微生物による乳酸菌発酵で独特のコクと風味があることから「お漬物のようなお茶」と表現されることもあるそうです。
最近の研究では「阿波晩茶」には30種類近い乳酸菌が含まれ、整腸作用があり、高血圧、糖尿、免疫力アップ、美容にも効果があるとされています。
豊川市在住のすだちあわまるさんは以前、徳島県で暮らした経験で得たご縁から、徳島県の特産のすだちの栽培と、四国の伝統茶を取り扱うようになったそうです。
乳酸菌発酵のお茶(後発酵茶)と他のお茶との違い
茶の木から摘み取った茶葉には、酵素が含まれているので、放っておくと発酵が進みますが、それは酵素による自然発酵です。
緑茶は摘み取った後に熱を加えて発酵を止めたもので不発酵茶。
烏龍茶は半発酵茶、紅茶は発酵茶。
後発酵茶はそのどれにも当てはまらないのです。
その作り方は、摘み取った茶葉を熱処理して酵素による発酵を止めた後、木製の樽に入れて1〜3週間ほど漬けて乳酸発酵をさせます。
この地域に生息する乳酸菌によるものなので、阿波晩茶はここでしか作ることが出来ない、ということになるのです。
お茶の世界は製法や種類も様々で、知れば知るほど奥深いものです。そして「発酵」という微生物の大いなる自然の力と人間の身体(特に腸内環境)との関わりにも興味は広がり、すっかり阿波晩茶に魅了されてしまいました。
すだちあわまるさんが次回の「野市」に出店する際には、「阿波晩茶」に興味がある方はぜひお話を聞いてみてください。
貴重な「阿波晩茶」の試飲のチャンスがあるかも知れません。
ニホンミツバチの「盛り上げ巣」
-studio chororiさんの養蜂-
studio chororiさんが持ってきてくれたのは、ニホンミツバチの「盛り上げ巣」。
聞き慣れない「盛り上げ巣」という言葉に最初は「?」と思いましたが、chororiさんから詳しく教えていただくと、その貴重さを知り、市場や一般的なお店には出回らないものが世の中にはたくさんあるのだ、また昔はそのことが当たり前だったのだ、、、とあらためて思いながら目の前の一期一会の美しい自然の恵みに感嘆します。
「盛り上げ巣」とは、巣箱を重ねた普通の貯蜜層より更に上にミツバチが巣を作り、蜜を貯める現象のこと。
そこでは子育てをしないので、純粋なハチミツの巣となり、味も格別。
chororiさんが一緒に持参したウエハースに「盛り上げ巣」をとろ〜りとのせて試食をさせてくれました。なんとも淡麗で純粋な甘さ。
作陶とポタジェ(フランス語で「家庭菜園」)の庭やニホンミツバチの養蜂を手掛け、「半農半陶」を目指すchororiさんの暮らしと芸術に力をいただきます。
スウェーデンの国民食「ハッセルバックポテト」
noai(ノアイ)のテーブルに、豆に暮らす野の暮らし研究所の豆野さんが作って持ってきてくれたのは、スウェーデンの有名なじゃがいも料理「ハッセルバックポテト」。
豆に暮らす野の暮らし研究所では、長年に渡ってWWOOF制度による海外からの様々なウーファーさんの受け入れをしています。
その中で最近、スウェーデンからのウーファーさんが豆野家に滞在中に教えてくれたのがこちらの「ハッセルバックポテト」でした。
スウェーデンの国民食とも言われるこのじゃがいも料理は、じゃがいもに細かく切れ目を入れ、刻んだにんにく、ハーブと塩、オリーブオイルを振ってオーブンで火が通るまで焼き、仕上げにチーズをかけてお好みで焦げ目をつけて食べます。
スウェーデンではじゃがいもを主食として日常的に食べるので、この他にも「ヤンソンさんの魅惑」や「ディルポテト」といったじゃがいも料理がたくさんあるそうです。
豆野家では、ウーファーさんが滞在し、農作業や料理を一緒にして日常の暮らしを共にすることで、多様な文化や人の様々な価値観や考えに触れる学びの機会となり、一家で楽しんでいるそうです。
野市の後、私も自分で「ハッセルバックポテト」を作ってみたくなり、挑戦してみました。
薄い切れ目をたくさん入れることで、火の通りが早く、食感も繊細で優雅。シンプルな味付けとチーズの香りが食欲をそそり、飽きずにどれだけでも食べられそうな美味しさです。
興味のある人はぜひチャレンジしてみてくださいね。お客さまを招いた時の料理にもぴったりです。
遠くスェーデンから豆野家にやってきた旅人が作った料理が、こんな風に渥美半島で楽しまれていること、ウーファーさんも想像していなかったのではないでしょうか。
世界中の文化も日本に伝わったクリスマスやハロウィーンなどのイベント、各地のどこか似た様式を持つお祭りなども、こんな風にして伝播してきたものなのかもしれないですね。
ローカルガストロノミーと「小さな農」
ローカル・ガストロノミーとは、地域の風土、歴史、文化を料理に表現すること。根底にあるのは、「料理は地域経済や文化、教育活動にどのように貢献できるのか」という視点です。分かりやすく言えば「地産地消」という考え方と共通する部分もあるのですが、単純に地域の食材を使えばいいのではなく、もっと地域のことを総合的に学び、サスティナブルな食環境を考え、その上で「自分の料理に地域を表現していきましょう」という考え方です。
/ ローカル・ガストロノミー協会のウェブサイトから
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ここ、渥美半島の地元の農産物や魚介類が「ローカルガストロノミー」のような考えと結びついて、全国に自慢できるような料理(文化)となって地域も観光客も豊かさを実感できるようになることもひとつの理想的なイメージではありますが、野市が探求し応援する小さく独自な農を見つめることも、地域や経済、文化を守り育てることもこれからの「ガストロノミー」=「食と文化環境の保持と継承」だと感じます。
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今後も野市を通して、暮らしと融合した新しい農のあり方を探求しながら、人とものが出会い、生きた草の根の交流・学び・創造へとつながること、また「野市」を土としてそこから生まれる物事を発信するメディアであることを継続していきます。
ご来場いただいた皆さま、出店者の皆さま、Yotteco関係者の皆さま、ありがとうございました。
text and Illustration / Myoujou Library
2024/10/5
Noichi